夏になると食べたくなる、甘くてジューシーなとうもろこし。ところで、「もろこし」という言葉も耳にしますが、とうもろこしともろこしの違いを正確に説明できるでしょうか。
この二つの言葉には、単なる呼び方の違いだけでなく、言葉の由来や語源、そして植物としての分類にまで及ぶ興味深い背景があります。例えば、名前に含まれる「唐」という漢字が、その歴史を紐解く鍵となります。
私たちが普段食べているスイートコーンや、映画館でおなじみのポップコーンといったとうもろこしの種類だけでなく、実は「もろこし」という言葉が指す意味の範囲は広く、別の穀物を指す場合が多いのです。
その代表が、高黍、別名タカキビやソルガムと呼ばれる植物です。とうもろこしとタカキビでは、穂の形など見た目にも明確な違いがあり、比較してみると一目瞭然です。
この記事では、そんなとうもろこしともろこしの違いを徹底的に解説します。さらに、美味しいとうもろこしの選び方や新鮮さの見分け方、風味を長持ちさせる冷蔵や冷凍での保存方法、そして誰でも試せる簡単なレシピや食べ方まで、実用的な情報も網羅しました。とうもろこしのひげに隠された秘密などの豆知識や雑学もご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
ポイント
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言葉の由来から植物の分類まで、とうもろこしともろこしの根本的な違い
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とうもろこしと、もう一つのもろこし「タカキビ」を簡単に見分けるポイント
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スーパーで美味しいとうもろこしを選ぶ方法と、鮮度を保つ正しい保存術
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誰かに話したくなる、とうもろこしのひげや粒に関する面白い豆知識
とうもろこしともろこしの違い
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とうもろこしともろこしの違いとは?
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言葉の由来と語源にある「唐」の謎
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「もろこし」という言葉の意味と穀物の範囲
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もう一つのもろこし、高黍(タカキビ・ソルガム)
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とうもろこしとタカキビの見た目を比較
とうもろこしともろこしの違いとは?
とうもろこしともろこしは、広い意味では同じイネ科の植物ですが、一般的にはそれぞれ別の植物を指します。植物の分類上、とうもろこしは「トウモロコシ属」、そして一般に「もろこし」と呼ばれるものは「モロコシ属」に属しており、属レベルで異なるのです。
なぜなら、私たちが普段「とうもろこし」として食べているものは、中南米が原産の植物です。一方、「もろこし」という言葉は、古くは中国から伝わった穀物を指し、現在では主にアフリカ原産の「高黍(タカキビ)」、別名「ソルガム」を指すことがほとんどだからです。
例えば、スーパーで売られている甘いとうもろこしは「トウモロコシ属」の植物です。一方で、雑穀米に含まれていたり、一部の地域で団子などに加工されたりする「もろこし」は、「モロコシ属」のタカキビであることが多いでしょう。
要するに、「とうもろこし」は特定の植物を指す固有名詞に近いですが、「もろこし」はより広い意味合いを持つ言葉であり、文脈によって指す対象が変わる可能性がある、と理解しておくと分かりやすいです。
言葉の由来と語源にある「唐」の謎
「とうもろこし」という名前の由来には、日本の歴史と海外との交流が深く関わっています。この名前を理解する鍵は、「もろこし」と「唐(とう)」という二つの言葉にあります。
まず、「もろこし」という言葉は、古く日本で中国大陸、特に「唐土(もろこし)」を指す言葉でした。そして、中国から伝来した黍(きび)に似た穀物を「もろこし」と呼んでいたのです。この「もろこし」は、現在でいう高黍(タカキビ)を指していたと考えられています。
その後、16世紀にポルトガル人によってアメリカ大陸原産の新しい植物、つまり現在のとうもろこしが日本に伝わりました。当時の日本人にとって、この新しい植物は、すでによく知られていた「もろこし(タカキビ)」に似ているように見えました。そして、海外から来た珍しいものであることから、中国を意味する「唐」を頭につけて、「唐もろこし」と呼ぶようになったのです。これが変化して「とうもろこし」という名前が定着しました。
ちなみに、とうもろこしを漢字で書くと「玉蜀黍」となります。「蜀黍」はもろこし(タカキビ)を意味する漢字です。とうもろこしの粒が宝石の玉のように美しく並んでいることから、頭に「玉」という字が当てられたと言われています。
「もろこし」という言葉の意味と穀物の範囲
「もろこし」という言葉は、単一の植物を指すのではなく、歴史的な背景から複数の意味を持つようになりました。その範囲は、特定の穀物から、かつての中国そのものを指す言葉にまで及びます。
主な理由として、古来、日本にとって海外の進んだ文化や物品は、主に中国(唐土)を経由してもたらされたことが挙げられます。そのため、「もろこし」という言葉は、中国から来た珍しい、あるいは優れたものを指す代名詞のような役割を持っていました。
この文脈から、植物としての「もろこし」は、中国から伝わった黍(きび)に似た穀物の総称として使われるようになりました。この中で最も代表的なものが、前述の通り、高黍(タカキビ)です。しかし、とうもろこしが伝来した際には、これも「唐のもろこし」と呼ばれたように、時代や文脈によって指し示す対象が変化してきたのです。
また、とうもろこしは、米や小麦と並んで「世界三大穀物」の一つに数えられています。世界中で主食や飼料、工業原料として非常に重要な位置を占めている穀物です。このように、私たちが野菜として親しんでいるとうもろこしは、世界的には主要な穀物として扱われている点も、その特徴の一つと考えられます。
もう一つのもろこし、高黍(タカキビ・ソルガム)
とうもろこしと混同されやすい「もろこし」の正体は、多くの場合「高黍(タカキビ)」という穀物です。これは英語名で「ソルガム」とも呼ばれ、世界五大穀物の一つに数えられる重要な作物です。
タカキビの原産地はアフリカ大陸のサバンナ地帯とされ、乾燥や高温に非常に強いという特徴を持っています。そのため、トウモロコシが育ちにくい厳しい環境でも栽培が可能で、アフリカやインド、中国などで古くから主食や飼料として利用されてきました。
日本には室町時代頃に中国から伝わったとされ、かつては山間部などで栽培されていました。主な利用法としては、粉にして団子や餅(きびだんごの原料説もあります)、そばがきのようにして食べられていたようです。また、中国では「高粱(コーリャン)」と呼ばれ、有名な蒸留酒である白酒(パイチュウ)の原料としても知られています。
近年、このタカキビ(ソルガム)は、栄養価の高さから再び注目を集めています。特に、小麦アレルギーの一因とされるグルテンを含まない「グルテンフリー」の食材として知られており、健康志向の高い人々からスーパーフードとして人気が高まっています。食物繊維やミネラルが豊富に含まれているとされ、食生活に取り入れる動きが広がっているのです。
とうもろこしとタカキビの見た目を比較
とうもろこしとタカキビ(ソルガム)は、言葉の上では混同されることがあっても、植物としての見た目には明確な違いがあります。それぞれの特徴を知れば、簡単に見分けることが可能です。
最も分かりやすい違いは、実がなる「穂」の形です。とうもろこしは、太い茎の側面に、皮に包まれた大きな1本の穂(雌穂)をつけます。私たちが食べる粒は、この穂にぎっしりと並んでいます。一方、タカキビは、茎の先端にススキのように細かく枝分かれした穂をつけ、その一つ一つの先に小さな実がつきます。
この違いを理解するために、以下の表で主な特徴を比較してみましょう。
特徴 |
とうもろこし (玉蜀黍) |
タカキビ (高黍 / ソルガム) |
---|---|---|
植物分類 |
イネ科 トウモロコシ属 |
イネ科 モロコシ属 |
原産地 |
中南米 |
アフリカ |
穂の形 |
茎の途中に1本の大きな穂がつく |
茎の先端にススキ状の穂がつく |
粒のつき方 |
芯に粒がぎっしり並ぶ |
穂の枝の先に小さな粒がつく |
主な食用部分 |
未熟な状態の粒(スイートコーンなど) |
完熟・乾燥させた粒を粉にする |
主な用途 |
食用、飼料、コーンスターチ、バイオエタノール |
食用(雑穀)、飼料、酒の原料、バイオマス資源 |
このように、穂のつき方を見るだけで、両者は全く異なる植物であることが分かります。もし畑などで見かける機会があれば、ぜひ茎のどの部分に実がついているかに注目してみてください。
とうもろこしともろこしの違いを知って楽しむ方法
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スイートコーンとポップコーン
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新鮮なとうもろこしの選び方と見分け方
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美味しさを保つ冷蔵・冷凍の保存方法
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簡単レシピ!とうもろこしの美味しい食べ方
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ひげに関する豆知識と面白い雑学
- とうもろこしともろこしの違いのポイント
スイートコーンとポップコーン
私たちが普段「とうもろこし」として楽しんでいるものには、用途に応じて様々な種類があります。その中でも特に代表的なのが、食用の「スイートコーン」と、お菓子の原料になる「ポップコーン」です。
スイートコーン(甘味種)
スイートコーンは、その名の通り糖度が高く、ジューシーな食感が特徴のとうもろこしです。一般的に野菜として流通しており、茹でたり焼いたりして食べられるのは、ほとんどがこの種類です。スイートコーンはさらに、粒の色によって「ゴールデンコーン(黄粒種)」「シルバーコーン(白粒種)」「バイカラーコーン(黄白混粒種)」などに分けられます。近年では品種改良が進み、果物のように生で食べられるほど甘い品種も登場しています。
ポップコーン(爆裂種)
ポップコーンは、映画館のスナックとしておなじみですが、これもとうもろこしの一種です。粒はスイートコーンに比べて小さく、皮が非常に硬いのが特徴です。この硬い皮を持つ粒を乾燥させ、加熱すると、内部の水分が水蒸気となって急激に膨張し、圧力に耐えきれなくなった皮が破裂(爆裂)して、あの中身が飛び出したふわふわの状態になります。
スイートコーンを同じように加熱しても、皮が柔らかくすぐに破れてしまうため、ポップコーンにはなりません。
これら以外にも、世界には様々なとうもろこしが存在します。例えば、コーンスターチや家畜の飼料として最も多く生産されている「デントコーン(馬歯種)」や、メキシコ料理のトルティーヤなどに使われる「フリントコーン(硬粒種)」など、その用途は多岐にわたります。
新鮮なとうもろこしの選び方と見分け方
スーパーや直売所で美味しいとうもろこしを選ぶには、いくつかのポイントがあります。鮮度が味を大きく左右するため、新鮮さを見分けるコツを知っておくことが大切です。
まず注目したいのは「皮」です。皮の色が鮮やかな濃い緑色をしているものを選びましょう。皮が黄色っぽくなっていたり、しなびていたりするものは、収穫から時間が経っている可能性があります。皮がしっかりと実を包み、みずみずしさを保っているものが新鮮な証拠です。
次に確認するのは「ひげ」です。とうもろこしの先端から出ているひげは、茶色か黒褐色に色づいているものが完熟しているサインです。
ひげが緑色のものはまだ熟しきっていない可能性があり、逆に乾燥しきってカサカサになっているものは鮮度が落ちているかもしれません。触ってみて、少ししっとり湿り気を感じるくらいが理想的です。また、ひげは一粒一粒から伸びているため、ふさふさと量が多いものほど、実がぎっしり詰まっていると考えられます。
最後に、手に持ってみて「重さ」を確かめます。同じくらいの大きさであれば、ずっしりと重みを感じるものの方が、水分をたっぷりと含んでいてジューシーです。皮の上から軽く押してみて、粒がしっかり詰まっている感触があるかも確認すると良いでしょう。これらのポイントを押さえることで、甘くて美味しいとうもろこしに出会える確率が高まります。
美味しさを保つ冷蔵・冷凍の保存方法
とうもろこしは収穫された瞬間から糖度が落ち始める、非常に鮮度が命の野菜です。そのため、購入後はできるだけ早く食べることが一番ですが、すぐに食べきれない場合は正しい方法で保存することで、美味しさを長持ちさせられます。
冷蔵保存の場合
冷蔵保存する場合のポイントは、乾燥を防ぐことです。皮をむかずに、できれば薄皮を2〜3枚残した状態で1本ずつラップに包むか、新聞紙でくるみます。そして、ポリ袋に入れて口を縛り、冷蔵庫の野菜室に「立てて」保存しましょう。立てて保存するのは、とうもろこしが育った状態に近づけることで、ストレスを減らし鮮度を保つためです。この方法で、2〜3日程度は美味しさを保つことができます。
冷凍保存の場合
長期間保存したい場合は、冷凍がおすすめです。冷凍する方法は「生のまま」と「加熱してから」の2通りあります。
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生のまま冷凍する: 皮をむき、1本ずつラップでぴったりと包みます。それを冷凍用の保存袋に入れて、空気を抜いてから冷凍庫へ入れます。この方法だと約1か月保存可能です。調理する際は、凍ったまま茹でたり、電子レンジで加熱したりできます。
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加熱してから冷凍する: 少し硬めに茹でるか、電子レンジで加熱します。熱いうちにラップで包むと、実がしわしわになるのを防げます。粗熱が取れたら、水気をよく拭き取り、冷凍用の保存袋に入れて冷凍します。輪切りにしたり、実を芯から外してバラバラの状態で冷凍したりすると、使うときに便利です。こちらも約1か月保存できます。
どちらの方法でも、早めに処理することが美味しさを保つ鍵となります。
簡単レシピ!とうもろこしの美味しい食べ方
とうもろこしは、そのままでも十分に美味しいですが、少し手を加えるだけで様々な料理に変身します。ここでは、誰でも簡単に試せる美味しい食べ方をご紹介します。
基本の塩茹で・レンジ蒸し
最もシンプルで美味しい食べ方は、やはり塩茹でです。鍋にとうもろこしと、かぶるくらいの水、そして塩(水1リットルに対し大さじ2杯程度が目安)を入れて火にかけ、沸騰してから3〜5分茹でます。
水から茹でることで、実がふっくらと仕上がります。 もっと手軽に作りたい場合は、電子レンジが便利です。皮を数枚残したままラップで包み、1本あたり600Wで5分ほど加熱するだけで、蒸したように甘みが凝縮されたとうもろこしが完成します。
香ばしい焼きとうもろこし
茹でるか蒸したとうもろこしに、醤油、みりん、砂糖を混ぜたタレを塗りながら、フライパンやグリルで焼き色がつくまで焼きます。香ばしい香りが食欲をそそり、お祭りの屋台のような味わいを楽しめます。バターを少し加えると、さらにコクが増します。
とうもろこしご飯
お米を研いだ後、炊飯器に生のとうもろこしの実を芯からそぎ落として入れ、芯も一緒に入れます。塩と酒を少々加えて普通に炊くだけで、とうもろこしの甘い香りと旨みがご飯全体に広がります。炊き上がったら芯を取り出し、バターを混ぜ込むのもおすすめです。
とうもろこしのかき揚げ
生のとうもろこしの実を、玉ねぎや枝豆など他の野菜と混ぜ、天ぷら粉で和えて揚げるだけです。とうもろこしの甘さと、サクサクの衣の食感が絶妙にマッチします。塩でシンプルにいただくのが美味しいです。
これらの他にも、ポタージュスープやサラダのトッピングなど、とうもろこしの活躍の場は無限にあります。
ひげに関する豆知識と面白い雑学
とうもろこしの調理の際に捨ててしまいがちな「ひげ」ですが、実はとうもろこしの生態を知る上で非常に興味深い部分であり、面白い豆知識がたくさん隠されています。
ひげの正体と粒との関係
とうもろこしのひげは、一本一本が雌しべであり、「絹糸(けんし)」と呼ばれています。そして、この絹糸は、とうもろこしの粒の一つ一つから伸びています。つまり、「ひげの数と粒の数は同じ」ということになります。
ひげに雄花の花粉がつくことで受粉し、粒が成長していくのです。そのため、ひげがふさふさとたくさん生えているとうもろこしは、それだけ多くの粒がぎっしりと詰まっている証拠と言えるでしょう。
粒の列は必ず偶数になる
とうもろこしの実を輪切りにしてみると、粒の列が必ず偶数(14列、16列、18列など)になっています。これは、穂の元となる部分が成長する過程で、細胞が必ず2つに分裂を繰り返すためです。
一番最初の細胞が2つに、それが4つに、さらに8つにと倍々に増えていくため、最終的な列の数は必ず偶数になるというわけです。
朝採れが一番甘い理由
とうもろこしは「朝採れが一番甘い」とよく言われます。これには科学的な理由があります。とうもろこしは日中、光合成によって葉で糖分を作り出します。そして、夜の間にその糖分を実(粒)へと運び、蓄えます。そのため、糖分が実に最大限蓄えられた早朝に収穫したものが、最も甘みが強いのです。日が昇ると、蓄えた糖分を自身の成長エネルギーとして消費し始めてしまうため、甘みが少しずつ減少していきます。
この記事では、とうもろこしともろこしの違いについて、言葉の由来から植物の特性、美味しい楽しみ方まで幅広く解説しました。最後に、記事の重要なポイントをまとめます。
とうもろこしともろこしの違いのポイント
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とうもろこしともろこしは一般的に別の植物を指す
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とうもろこしはトウモロコシ属、もろこしはモロコシ属に分類される
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「もろこし」は古く中国を指す言葉だった
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「とうもろこし」は「唐のもろこし」が語源
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漢字の「玉蜀黍」は美しい粒を持つもろこしという意味
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一般に「もろこし」と呼ばれるのは高黍(タカキビ・ソルガム)
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タカキビはアフリカ原産で乾燥に強い
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とうもろこしは大きな穂が、タカキビはススキ状の穂が特徴
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食用のとうもろこしは主にスイートコーン
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ポップコーンは爆裂種という専用の品種から作られる
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新鮮なとうもろこしは皮が緑色でひげが茶色く重いもの
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保存は皮付きのまま冷蔵庫で立てるのが基本
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長期保存は生のままか茹でてから冷凍する
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ひげの正体は雌しべで、その数と粒の数は同じ
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とうもろこしの粒の列は必ず偶数になる
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朝採れが一番甘いのは糖分が実に蓄えられているため
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