種から植物を育てる楽しみは格別ですが、「なぜか芽が出ない」「芽が出てもうまく育たない」といった失敗や後悔を経験したことはありませんか。
その原因は、使っている土にあるのかもしれません。
普通の培養土で種まきをすると、肥料が強すぎてしまったり、土の粒子が粗すぎて発芽に適さなかったりすることがあります。
市販されている培養土の違いを理解し、配合不要で初心者におすすめの市販の種まき用土を選ぶのも一つの方法です。
しかし、土を自作するメリットを知れば、園芸がさらに楽しくなるはずです。
この記事では、種まき用土の基本的な作り方や配合から、野菜や花別最適な種まき用土の配合、さらには種まき用土に使う赤玉土の目的別使い分けや、保水性を高めるバーミキュライトには何を足すべきかまで、幅広く解説します。
種まき用土の代用アイデアや、発芽率を左右する種まき後の水やりと管理のコツもご紹介します。
適切な土の知識を身につけ、種まきの成功率をぐっと引き上げましょう。
ポイント
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種まきに適した土の基本的な条件と種類を理解できる
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初心者でも失敗しにくい種まき用土の作り方と配合がわかる
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育てる野菜や花に合わせた最適な土の選び方が身につく
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種まき後の正しい水やりと管理方法を学べる
種まき用の土の配合で失敗しない基本
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培養土の違いを知り最適な土を選ぶ
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普通の培養土で種まきはできるのか
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種まき用土を自作するメリットとは
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配合不要!初心者におすすめの市販の種まき用土
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種まき用土の作り方と配合の基本
培養土の違いを知り最適な土を選ぶ
園芸店の土売り場には、「培養土」や「培土」といった名称で様々な商品が並んでいます。
これらは呼び名が違うだけでほぼ同じものを指しますが、大切なのは「何のために配合された土か」を見極めることです。
一般的に「花と野菜の培養土」として販売されているものは、ある程度育った苗を植え付けて元気に育てることを目的に作られています。
そのため、植物の成長を助ける肥料分(元肥)があらかじめ含まれており、通気性や排水性を高めるために粗めの素材が使われていることが多いです。
一方、「種まき用土」や「さし芽・種まきの土」は、デリケートな種の発芽と初期生育に特化して配合されています。
これらの土が持つべき条件は明確で、主に以下の3点が挙げられます。
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清潔で無菌であること: 使い古しの土に含まれる雑菌や病原菌は、発芽したばかりの弱い芽や根にとって大敵です。そのため、種まき用土は新品で、加熱殺菌処理などが施された清潔なものを選ぶのが基本となります。
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粒子が細かいこと: 小さな種は、土の粒子が粗いと隙間に落ち込みすぎてしまい、結果的に深植えの状態になります。これでは光が届かなかったり、芽が土を押しのけて地上に出るのに多大なエネルギーを消耗したりして、発芽率が低下する原因になります。粒子が細かい土は、種を適切な深さに保ち、発芽を助けます。
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肥料分が不要(または極少量)であること: 種は自身が持つ養分(胚乳や子葉)を使って発芽します。そのため、発芽段階では外部からの肥料は必要ありません。むしろ、濃い肥料成分は、未熟な根にとって負担となり、根焼けを起こして枯れてしまう原因にもなり得ます。
これらの違いを理解すれば、なぜ種まきに専用の土が推奨されるのかが分かります。
育てる段階と目的に合わせて、適切な土を選ぶことが、園芸成功への第一歩と言えるでしょう。
普通の培養土で種まきはできるのか
「わざわざ種まき用土を買わずに、手元にある普通の培養土で種まきはできないのだろうか」と考える方も少なくないでしょう。
全く不可能というわけではありませんが、発芽率の低下やその後の生育不良につながるリスクがあるため、あまり推奨はされません。
その理由は、前述した種まき用土の条件と関係しています。
第一に、多くの「花と野菜の培養土」には、苗の成長を促進するための元肥が含まれています。
この肥料成分が、発芽したばかりのデリケートな根に触れると、肥料焼けを起こして傷んでしまう可能性があります。
特に肥料に敏感な種類の植物にとっては、このリスクは大きくなります。
第二に、一般的な培養土は、水はけや通気性を良くするために、赤玉土の中粒や軽石、バーク堆肥の粗い木片などが配合されています。
これらの粒子は小さな種子にとっては大きすぎます。
種が土の隙間に深く埋もれてしまったり、覆土が厚くなりすぎたりして、発芽に必要な光が届かない、あるいは芽が地上に出られないといった問題が生じやすくなります。
もし、どうしても普通の培養土を使いたい場合は、一手間加えることでリスクを軽減する方法があります。
培養土をふるいにかけ、大きな塊や粗い木片などを取り除き、粒子の細かい部分だけを選んで使うのです。
これにより、種が埋まりすぎるのを防げます。
ただし、肥料成分の問題は残るため、やはり発芽の成功率を最優先するならば、初めから無肥料で粒子が細かい種まき専用の土を使う方が確実です。
安価な培養土の中には、品質が安定せず、未熟な堆肥が混ざっていることや、ビニール片などの不純物が入っている場合もあります。
このような土は、発芽を阻害するだけでなく、病気の原因にもなりかねません。
したがって、普通の培養土を代用する場合は、その品質にも注意を払う必要があります。
種まき用土を自作するメリットとは
市販の種まき用土は手軽で便利ですが、自分で土を配合して自作することには、コスト面以外にも多くのメリットがあります。
園芸に少し慣れてきたら、ぜひ挑戦していただきたい工程です。
最大のメリットは、育てる植物の性質に合わせて、最適な土の環境を自分で作り出せる点にあります。
植物にはそれぞれ好みがあり、例えば乾燥を好むもの、湿り気を好むもの、水はけの良さが特に求められるものなど様々です。
自作であれば、基本用土の配合比率を変えることで、これらの要求に細かく応えることが可能です。
例えば、水はけを重視したい場合は砂やパーライトの割合を増やし、保水性を高めたい場合はピートモスやバーミキュライトを多めに配合するといった調整ができます。
この試行錯誤の過程で、土の性質やそれぞれの用土が持つ役割への理解が深まり、園芸の知識と技術が格段に向上するでしょう。
また、コストを抑えられる点も大きな魅力です。
特に多くの苗を育てたい場合、市販の種まき用土を大量に購入すると意外と費用がかかります。
赤玉土やバーミキュライトといった基本用土をそれぞれ大袋で購入しておけば、必要な分だけをその都度配合して使えるため、結果的に一回あたりのコストを大幅に削減できます。
デメリットとしては、配合の手間がかかること、そしてそれぞれの用土を保管するスペースが必要になる点が挙げられます。
また、基本用土はそれぞれ新品で清潔なものを使う必要があり、特に畑の土などを利用する場合は、病原菌や雑草の種を取り除くための殺菌処理(熱湯消毒や太陽熱消毒など)が不可欠です。
このような手間はかかりますが、自分の手で作り出した土で種から芽が出て、元気に育っていく姿を見る喜びは格別です。
植物への愛情がより一層深まることも、自作の大きなメリットと言えるでしょう。
配合不要!初心者におすすめの市販の種まき用土
「土の配合はまだ難しそう」と感じる初心者の方や、「手軽に種まきを始めたい」という方には、配合不要ですぐに使える市販の種まき専用土が最適です。
園芸メーカー各社から、発芽率を高めるための工夫が凝らされた高品質な商品が販売されています。
市販品を選ぶ最大の利点は、開封してすぐに使える手軽さと、品質の安定性です。
種まきに必要な「清潔さ」「粒子の細かさ」「無肥料(または微量な初期肥料)」といった条件が全て整えられており、土が原因での失敗リスクを大幅に減らすことができます。
代表的な市販の種まき用土には、以下のような種類があります。
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袋入りの種まき培土: タキイ種苗の「タキイ種まき培土」などが有名で、多くの園芸愛好家から信頼されています。ピートモスやバーミキュライトなどがバランス良く配合され、pH調整もされているため、安心して使用できます。発芽後の初期生育に必要な微量の肥料が含まれている製品もあり、育苗期間中の管理が楽になります。
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ピートバン: サカタのタネの「ピートバン」に代表される、乾燥圧縮された板状のピートモスです。受け皿に入れて水をかけるだけで、ふかふかの種まき用土に復元します。手も汚れにくく衛生的で、細かい種も均一にまきやすいのが特徴です。ただし、深さが限られるため、ゴボウやニンジンなどの直根性(根がまっすぐ深く伸びる性質)の植物にはあまり向きません。
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ジフィーセブン: ピートモスをポット状に成形した育苗資材です。これも水を吸わせるだけで膨らみ、そのまま土として使えます。種をまいて苗が育ったら、ポットごとそのまま植え付けられるため、根を傷める心配がありません。移植を嫌う植物に特に適しています。
市販品を選ぶ際の注意点としては、極端に安価な製品は避けた方が無難です。
安価なものの中には、不純物が混じっていたり、土の質が均一でなかったり、一度乾燥すると極端に水をはじくようになってしまったりするケースがあります。
信頼できるメーカーの製品を選ぶことが、成功への近道です。
種まき用土の作り方と配合の基本
種まき用土を自作する際の基本は、複数の性質が異なる用土を混ぜ合わせ、それぞれの長所を活かしてバランスの良い土を作ることです。
中心となるのは「基本用土」と、その性質を改良する「補助用土(改良用土)」です。
種まき用土の配合で基本となるのは、「赤玉土(小粒)」と「バーミキュライト」です。
これらを同量ずつ(1:1の割合)混ぜ合わせるだけでも、非常に優れた種まき用土になります。
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赤玉土(小粒): 保水性、排水性、保肥性のバランスが良く、土の骨格となります。必ず無菌の新品を使いましょう。
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バーミキュライト: 多孔質で非常に軽く、保水性と通気性に優れています。無菌で、覆土(種の上にかぶせる土)にも最適です。
この基本配合に、目的に応じて他の用土を加えていきます。
用土の種類 |
主な役割と特徴 |
配合の目安 |
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ピートモス |
保水性を高め、土を酸性に傾ける。軽量。 |
全体の1〜2割 |
パーライト |
通気性と排水性を大幅に向上させる。非常に軽い。 |
全体の1〜2割 |
川砂 |
排水性を高める。重さがあるため、土を安定させる。 |
全体の1割程度 |
例えば、乾燥を嫌う植物のためには、基本配合にピートモスを2割ほど加えることで保水力を高めることができます。
逆に、過湿を嫌う植物や、梅雨時期の種まきには、パーライトや川砂を加えて水はけを良くする工夫が有効です。
配合する際は、ブルーシートなどの上に各用土を広げ、塊をほぐしながらムラなく均一に混ぜ合わせることが大切です。
この時、土が乾燥しすぎていると混ざりにくいだけでなく、後で水をはじいてしまう原因にもなります。霧吹きなどで軽く湿らせながら作業すると、均一に混ざりやすくなります。
重要なのは、腐葉土や堆肥といった有機質で未熟なものは、原則として種まき用土には混ぜないことです。
これらに含まれる微生物や分解過程で発生するガスが、発芽や初期生育の妨げになる可能性があるからです。必ず清潔な無菌の用土を使いましょう。
種まき用の土を目的別に配合する実践ガイド!
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赤玉土を目的別に使い分け
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バーミキュライトには何を足す?
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野菜と花は別!最適な種まき用土の配合
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種まき用土の代用になる資材
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種まき後の水やりと管理のコツ
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種まき用の土を配合して生育の成功率をアップさせよう
赤玉土を目的別に使い分け
種まき用土のベースとして最も広く使われる赤玉土ですが、実はその粒の大きさによって特性が異なり、目的に合わせて使い分けることで、より良い結果を得ることができます。
赤玉土は、関東ローム層の赤土を乾燥させて粒状にしたもので、園芸用土の基本中の基本と言えます。その最大の特徴は、通気性、排水性、保水性、保肥性のバランスが取れている点にあります。
種まきに使うのは、主に「小粒」または「細粒」です。
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小粒(直径約2mm~5mm): 最も一般的に使われるサイズです。適度な隙間ができるため、通気性と排水性を保ちつつ、十分な保水性も確保できます。ほとんどの植物の種まきに適しており、迷ったらまず小粒を選ぶと良いでしょう。セルトレイや育苗ポットの用土として最適です。
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細粒(直径約2mm以下): 小粒よりもさらに粒子が細かく、保水性が非常に高くなります。ケシやプリムラ、ベゴニアのような、光を好む「好光性種子」や、非常に細かい微細種子をまく際に特に有効です。覆土をほとんどしない、あるいはごく薄くする場合でも、種が乾燥しにくい環境を保てます。ただし、その分、通気性が悪くなりがちなので、過湿にならないよう水やりの管理には注意が必要です。
一方で、「中粒」や「大粒」は種まき用土の配合には直接使いません。
粒子が大きすぎるため、小さな種子が隙間に落ち込んでしまうからです。
これらは、主にプランターや鉢植えの培養土のベースとして使ったり、鉢底石の代わりに用いて排水性を高めたりする目的で使用します。
また、赤玉土には「硬質」と呼ばれる、通常のものより高温で焼かれて硬く作られたタイプもあります。
硬質赤玉土は粒が崩れにくいため、長期間にわたって通気性や排水性を維持したい場合に有効ですが、保水性や保肥性は通常の赤玉土に劣ります。
種まきという短期間の用途では、あえて硬質タイプを選ぶ必要はあまりないでしょう。
このように、育てる植物の種の大きさや性質に合わせて赤玉土の粒のサイズを選ぶことが、発芽率を高めるための隠れたポイントになります。
バーミキュライトには何を足す?
バーミキュライトは、その優れた性質から種まき用土に欠かせない資材ですが、単体で使うよりも他の用土と組み合わせることで、さらにその効果を発揮します。
何を足すかによって、土の性質を自在にコントロールすることが可能です。
バーミキュライトは、蛭石(ひるいし)という鉱物を高温で焼いて膨張させた人工用土です。
無数の層が重なったアコーディオンのような構造をしており、その隙間に多くの水分や空気を保持することができます。主な特徴は以下の通りです。
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非常に軽量
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高い保水性・保肥性
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優れた通気性
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無菌で清潔
これらの特性から、種まき用土の配合材として、また、種の上に薄くかぶせる「覆土」として非常に重宝されます。
では、このバーミキュライトに何を足すと良いのでしょうか。
目的別に見ていきましょう。
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基本的な種まき用土を作る場合: 前述の通り、赤玉土(小粒)を同量加えるのが最も基本的な配合です。赤玉土が土の骨格となり、適度な重さと安定感を与えるのに対し、バーミキュライトが軽さと通気性、保水性を補い、理想的なバランスの用土が完成します。
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水はけをさらに良くしたい場合: 多湿を嫌う植物や、梅雨時など過湿が心配な環境で種まきをする際には、パーライトや川砂を加えます。パーライトは真珠岩などを高温で発泡させたもので、バーミキュライト以上に通気性・排水性を高める効果があります。赤玉土:バーミキュライト:パーライトを、例えば4:4:2の割合で配合すると、水はけが良く根腐れしにくい土になります。
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保水性を高めたい場合: 乾燥に弱い植物や、水やりの頻度を減らしたい場合には、ピートモスを加えるのが有効です。ピートモスは繊維質で、自重の何倍もの水を保持できます。ただし、酸性が強い性質があるため、入れすぎには注意が必要です。加える量は全体の1〜2割程度に留めると良いでしょう。
バーミキュライトは肥料成分をほとんど含まないため、発芽して本葉が数枚出てきたら、薄めた液体肥料を与えるなどして栄養を補給する必要があります。
このように、バーミキュライトをベースに考え、植物の性質や栽培環境に合わせて他の用土を足し引きすることで、よりオーダーメイドに近い理想の種まき環境を作り出すことができます。
野菜と花は別!最適な種まき用土の配合
一言で「種まき」と言っても、育てるのが野菜なのか花なのか、またその中でもどのような種類なのかによって、求められる土の条件は微妙に異なります。
それぞれの性質に合わせた配合をすることで、より健全な苗を育てることができます。
野菜の種まき用土
野菜の種まきでは、その後の植え付けや成長の速さを考慮した配合が求められます。
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果菜類(トマト、ナス、キュウリなど): これらの野菜は、比較的育苗期間が長く、定植後も力強く成長する必要があります。そのため、ある程度の保水性と保肥性があった方が、しっかりとした苗に育ちやすいです。
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おすすめ配合例: 赤玉土(小粒)4:バーミキュライト4:ピートモス2
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この配合は、適度な保水性と通気性を両立させ、根張りを促進します。
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葉菜類(レタス、ハクサイ、キャベツなど): 比較的生育が早く、根が繊細なものが多いです。通気性が良く、根がスムーズに伸びていける環境が好まれます。
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おすすめ配合例: 赤玉土(小粒)5:バーミキュライト3:パーライト2
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パーライトを加えることで通気性を高め、過湿による根の傷みを防ぎます。レタスなど好光性の種子の場合、覆土はごく薄くするか、バーミキュライトの微塵をかける程度にします。
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マメ科やトウモロコシ: これらの種子は大きく、自身の持つ養分が豊富なため、培地に余分な肥料や水分があると、かえって種が腐敗する原因になります。排水性と通気性を最優先した配合が適しています。
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おすすめ配合例: 赤玉土(小粒)5:川砂3:バーミキュライト2
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肥料分を嫌うため、ピートモスや腐葉土は使わず、水はけの良い用土で管理するのが成功の鍵です。
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花の種まき用土
花の種は非常に細かいものも多く、野菜以上にデリケートな管理が求められる場合があります。
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一般的な草花(マリーゴールド、サルビアなど): 野菜の果菜類と同様の、バランスの取れた配合で問題ありません。
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おすすめ配合例: 赤玉土(小粒)4:バーミキュライト4:ピートモス2
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微細種子・好光性種子(プリムラ、ベゴニア、ペチュニアなど): 種が非常に小さく、発芽に光を必要とするものが多いため、保水性が高く、種が埋もれない土が適しています。
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おすすめ配合例: 赤玉土(細粒)3:バーミキュライト5:ピートモス2
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粒子が細かい用土を使い、覆土はしないか、バーミキュライトの微塵をふるいかける程度にします。乾燥が大敵なので、霧吹きで水やりをしたり、発芽までラップをかけたりして湿度を保ちます。
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乾燥を好む種類(多肉植物など): とにかく水はけの良さが最も重要です。
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おすすめ配合例: 赤玉土(小粒)4:鹿沼土(小粒)3:川砂3
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保水性の高いバーミキュライトやピートモスは使わず、水はけの良い用土を主体にします。
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このように、育てる植物のルーツや性質を少し調べるだけで、土の配合に明確な目的が生まれます。
これが、園芸の面白さであり、成功率を高めるための大切なステップです。
種まき用土の代用になる資材
「専用の土を買いに行く時間がない」「少しだけ種をまきたい」といった場合に、身近なもので種まき用土の代用ができないかと考えることがあるかもしれません。
いくつかの資材は、その特性を理解して使えば、一時的な代用として機能します。
ただし、いずれも本格的な育苗には一長一短があり、あくまで応急処置的な方法、あるいは特定の用途に限られると考えるのが良いでしょう。
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キッチンペーパーや脱脂綿: レタスやカイワレ大根などの発芽テストや、短期間で収穫できるスプラウト類の栽培には非常に有効です。タッパーなどの容器に湿らせたキッチンペーパーを敷き、その上に種をまくだけです。発芽の様子が観察しやすいメリットがありますが、根が張るスペースがないため、大きく育てる植物には向きません。また、カビが生えやすいので、清潔な管理が求められます。
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ココピート(ヤシガラ土): ココヤシの繊維を加工した用土で、ピートモスに似た性質を持ちます。軽量で保水性に優れ、多くは弱酸性~中性に調整されています。無菌なので種まきにも使えますが、繊維質が多いため、製品によっては粒子が粗く、小さな種には向かない場合があります。また、肥料持ちはあまり良くありません。ブロック状で販売されているものは、水で戻すと何倍にも膨らむため、少量だけ使いたい場合には便利です。
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バーミキュライト単体: 前述の通り、バーミキュライトは無菌で保水性・通気性に優れているため、理論上は単体でも種まきが可能です。特に挿し木などではよく使われます。しかし、非常に軽いため、苗が少し大きくなると不安定になり、倒れやすくなるという欠点があります。また、肥料分を全く含まないので、発芽後の追肥管理が不可欠です。
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川砂: 清潔で水はけが非常に良いのが特徴です。多肉植物など、過湿を極端に嫌う植物の種まきには単体で使われることもあります。しかし、保水性や保肥性がほとんどないため、一般的な植物の育苗には適していません。水やり管理が非常に難しくなります。
これらの資材を代用する際は、それぞれのメリットとデメリットをよく理解することが大切です。
特に、苗を大きく育ててから植え替えたい場合には、根がしっかりと張れるだけの構造と、初期生育を支える最低限の保肥性が必要になります。
これらの条件を満たさない代用品では、発芽はしても、その後の健全な生育は難しくなる可能性が高いと言えます。
種まき後の水やりと管理のコツ
せっかく最適な土を配合しても、種まき後の水やりや管理方法を間違えてしまうと、発芽しなかったり、発芽しても枯れてしまったりします。
発芽までのデリケートな期間は、特に丁寧な管理が成功の鍵を握ります。
水やりの基本
種まき後の水やりで最も避けたいのは、水の勢いで種を流してしまったり、土の表面に凹凸を作ってしまったりすることです。
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種まき前の吸水: まず、種をまく前に、ポットやトレイに入れた土に底から水を吸わせる「底面給水」を行うのが最も確実な方法です。鉢底穴のある容器を、水を張った受け皿などに浸しておくと、土がゆっくりと全体に水を吸い上げます。土全体がしっとりと湿ったら、種まきを始めます。この方法なら、種をまいた後に水やりをする必要がなく、種が動く心配がありません。
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種まき後の水やり: 種をまいた後に水やりをする場合は、霧吹きを使うか、ハスの口が非常に細かいジョウロで、ごく優しく、そっとかけるようにします。土の表面が乾かないように管理するのが基本ですが、常にびしょ濡れの過湿状態は禁物です。過湿は種を腐らせたり、病気の原因になったりします。
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発芽までの水やり: 一度たっぷりと水を与えたら、土の表面が乾き始めるまでは、次の水やりは控えます。特に室内管理の場合は乾きにくいので、毎日必ず水やりをする必要はありません。土の状態をよく観察し、「乾いたら与える」を徹底します。
発芽までの置き場所と管理
種が発芽するには、水分だけでなく、適切な温度と酸素も必要です。
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温度管理: 多くの植物には「発芽適温」があります。種の袋に記載されている温度を参考に、なるべくその温度を保てる場所に置きます。気温が低い時期は、育苗用のヒーターを使ったり、室内のできるだけ暖かい場所に置いたりする工夫が必要です。
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光の管理: 発芽に光が必要な「好光性種子」(レタス、ペチュニアなど)と、光を嫌う「嫌光性種子」(トマト、ナスなど)があります。嫌光性種子の場合は、発芽まで新聞紙をかけておくなどして遮光すると発芽が促進されます。ただし、発芽が始まったら、徒長(ひょろ長く育ってしまうこと)を防ぐため、すぐに新聞紙を外して日に当てなければなりません。
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湿度管理: 乾燥は発芽の大敵です。特に細かい種子は乾燥しやすいため、ポットやトレイの上にラップを軽くかけたり、透明なプラスチックの蓋をしたりして湿度を保つと効果的です。この場合も、発芽が始まったらすぐに取り外して、風通しを良くしてあげることが大切です。
これらの丁寧な管理が、元気な芽を揃って出させるためのポイントです。
発芽した瞬間の感動を味わうために、日々の観察を楽しみながら行いましょう。
種まき用の土を配合して生育の成功率をアップさせよう
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種まき用土は「清潔」「粒子が細かい」「無肥料」が基本条件
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一般的な培養土は肥料分が多く粒子が粗いため種まきには不向き
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土の自作は植物に合わせた環境を作れ園芸技術も向上する
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初心者や手軽に始めたい場合は市販の専用土が確実で便利
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基本配合は「赤玉土(小粒)」と「バーミキュライト」を1:1
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この基本配合に目的に応じて他の用土を足し引きして調整する
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赤玉土は主に「小粒」、細かい種には「細粒」を使い分ける
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バーミキュライトは保水・通気性に優れ覆土にも最適
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野菜や花の種類によって最適な土の配合は異なる
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果菜類は保水性、葉菜類は通気性を意識した配合が効果的
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マメ科などは肥料分を嫌うため砂主体の排水性が良い土が適する
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種まき後の水やりは底面給水が基本で種の移動を防ぐ
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発芽までは乾燥と過湿に注意し適切な温度管理が不可欠
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発芽したらすぐに日に当て徒長を防ぐことが健全な苗作りの鍵
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土作りから管理まで丁寧に行うことが種まきの成功率を上げる
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