家庭菜園で人気のじゃがいもですが、栽培のクライマックスである収穫のタイミングに悩んだ経験はありませんか。
じゃがいも栽培には春と秋のシーズンがあり、それぞれに育て方の特徴が存在します。花が咲いたら追肥をすべきか、そもそもじゃがいもの花は食べれるのか、といった栽培中の疑問から、収穫サインの見極め方、収穫が遅れるとどうなるか、収穫に適した天気、そして失敗しないための試し掘りのススメまで、気になる点は多いでしょう。
さらに、収穫の手順と注意点を守り、収穫後の保存方法を正しく理解することが、美味しさを長持ちさせる鍵となります。この記事では、じゃがいもの収穫目安に関するあらゆる疑問に答え、栽培を成功に導くための知識を網羅的に解説します。
ポイント 春植えと秋植え、それぞれの栽培方法と収穫時期の違い 葉や茎の変化でわかる、具体的な収穫時期のサイン じゃがいもを傷つけずに収穫するための正しい手順とコツ 収穫したじゃがいもの品質を長く保つための適切な保存方法
じゃがいもの収穫目安と栽培のポイント
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春じゃがいも栽培のポイント
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秋じゃがいも栽培のポイント
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ジャガイモの花が咲いたら追肥をしよう
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じゃがいもの花は食べられない!実について
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葉や茎でわかる収穫サイン
春じゃがいも栽培のポイント
春に植え付けるじゃがいもは、家庭菜園初心者の方にも特におすすめの作型です。比較的管理がしやすく、収穫量も期待できます。
一般的に、春じゃがいもは2月下旬から3月上旬にかけて植え付けを行い、5月から6月頃に収穫期を迎えます。温暖な気候のもとで育つため、生育が旺盛で多くの収穫を見込みやすいのが大きな魅力です。代表的な品種には、ホクホクとした食感の「男爵」や、煮崩れしにくい「メークイン」、ビタミンCが豊富な「キタアカリ」などがあり、好みに合わせて選べます。
ただし、注意点も存在します。春植えの栽培期間は、日本の梅雨と重なることがあります。じゃがいもは過湿を嫌うため、水はけの悪い土壌では根腐れや病気の原因になりかねません。対策として、畝を高くして排水性を高めたり、雨除けを設置したりする工夫が有効です。
収穫時期も梅雨入り前を目指すのが理想的で、土が濡れている状態での収穫は芋を傷めやすいため避けるべきです。これらの点を考慮して計画を立てることが、春じゃがいも栽培を成功させるための鍵となります。
秋じゃがいも栽培のポイント
秋に植え付けるじゃがいもは、春植えとは異なる特徴と魅力を持っています。栽培難易度は少し上がりますが、その分、格別な味わいを楽しむことができます。
秋じゃがいもの植え付けは、暑さが残る8月下旬から9月頃に行い、収穫は11月から12月にかけてです。秋植えに適した品種としては、「デジマ」や「ニシユタカ」などが知られています。栽培期間中に徐々に気温が下がっていく環境で育つため、芋にでんぷんが効率よく蓄積され、春じゃがいもに比べてホクホクとした食感が強くなる傾向にあります。
一方で、栽培にはいくつかの注意が必要です。植え付け時期が高温であるため、種芋が土の中で腐敗してしまうリスクが高まります。そのため、種芋は切らずに丸ごと植えるか、切った場合は切り口をしっかりと乾燥させることが大切です。また、生育期間が短く、冬の霜が降りる前に収穫を終える必要があります。
植え付けが遅れると、芋が十分に大きくならないうちに寒さで地上部が枯れてしまう可能性も出てきます。このように、秋じゃがいもは栽培管理に少し手間がかかりますが、その美味しさは挑戦する価値があるといえるでしょう。
ジャガイモの花が咲いたら追肥をしよう
じゃがいもの芋を大きく、たくさん収穫するためには、適切なタイミングでの追肥が欠かせません。特に、花が咲く時期は、じゃがいもが大きく成長するための重要なサインとなります。
追肥は、栽培期間中に2回行うのが基本です。 1回目の追肥は、種芋から出た芽を数本に間引く「芽かき」の作業と同時に行います。植え付けから20日後くらいが目安で、この時期に栄養を補給することで、地下の芋が本格的に肥大化する準備を整えられます。
そして2回目の追肥が、蕾がつき始めた頃、または花が咲き始めた頃です。この時期は、地上部の葉や茎の成長から、地下の芋を大きくすることへとエネルギーの使い道が切り替わる大切な転換点にあたります。ここでしっかりと栄養を与えることが、収穫量を左右します。
追肥のやり方と注意点
肥料は、株元に直接与えるのではなく、株と株の間にまき、軽く土と混ぜ合わせるように施します。これは「肥料焼け」を防ぐためです。肥料が種芋や根に直接触れると、傷んでしまう原因になります。
肥料の種類については、初心者の方には窒素・リン酸・カリがバランス良く配合された市販の化成肥料が使いやすくおすすめです。ただし、肥料の与えすぎは禁物です。
葉ばかりが茂ってしまい、肝心の芋が育たない「つるぼけ」という状態になったり、害虫が発生しやすくなったりするデメリットがあります。株の生育状況を観察しながら、適量を心掛けることが大切です。
じゃがいもの花は食べられない!実について
じゃがいも栽培をしていると、可憐な花が咲き、時にはミニトマトのような小さな実がなることがあります。これらについて、どう扱うべきか悩む方もいるかもしれません。
まず、じゃがいもの花そのものは、食用には適していません。観賞用として楽しむことはできますが、食べるのは避けましょう。
次に、花を摘むべきか否かという点ですが、これには様々な意見があります。花を咲かせ、実をならせるためには、植物は多くのエネルギーを消費します。そのため、花を早めに摘み取ることで、その分の栄養を地下の芋の肥大化に集中させることができる、という考え方です。家庭菜園で少しでも大きな芋を収穫したい場合は、花を摘むのも一つの有効な手段と考えられます。
一方で、広大な畑で栽培するプロの農家は、労力の観点から花を摘むことはほとんどありません。研究によっては、花を摘んでも収量に大きな差は見られないという報告もあります。
じゃがいもの実の正体
花の後になる緑色の実は、食べることができません。この実には、じゃがいもの芽にも含まれる天然の毒素「ソラニン」や「チャコニン」が多く含まれており、食べると食中毒を引き起こす危険性があります。
この実は、じゃがいもがナス科の植物であることを示しており、中には種子が入っています。普段私たちが栽培に使う「種芋」は芋そのものですが、品種改良の世界では、この実から採取した種を使って新しい品種が開発されています。もし実がなったら、食用の危険性を理解した上で、植物の生態として観察してみるのも面白いでしょう。
葉や茎でわかる収穫サイン
土の中で育つじゃがいもは、収穫のタイミングが外から見えにくく、判断に迷うことが多い野菜です。しかし、地上部の葉や茎の状態を観察することで、適切な収穫時期を知ることができます。
最も分かりやすい収穫サインは、地上部の枯れ具合です。これまで青々と茂っていた葉や茎が、全体的に黄色く変色し始め、力が抜けたようにだらりと垂れ下がってきたら、収穫が近いことを示しています。これは、地上部の成長が終わり、地下の芋に蓄えられた栄養が成熟した合図です。全ての葉が完全に枯れ落ちるまで待つ必要はありませんが、全体の7〜8割が黄色く枯れてきた頃が、一つの目安となります。
また、日数で判断する方法もあります。一般的に、じゃがいもは種芋の植え付けから約100日(3ヶ月強)で収穫期を迎えます。植え付けた日を記録しておき、収穫時期の目安としてカレンダーで確認するのも良い方法です。
ただし、品種やその年の天候によって生育スピードは前後します。例えば、春植えの場合、梅雨の長雨が続くと、収穫サインが出る前に芋が土の中で傷んでしまう可能性も考えられます。あくまで日数と葉の状態の両方を総合的に見て、最適な収穫時期を判断することが大切です。
じゃがいもの収穫目安と収穫手順
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収穫が遅れるとどうなるのか
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失敗しない試し掘りのススメ
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収穫に適した天気を見極める
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収穫の手順と注意点を知ろう
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収穫後の保存方法で長く楽しむ
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じゃがいも収穫目安の理解が栽培のポイント
収穫が遅れるとどうなるのか
じゃがいもの収穫は、早すぎると芋が小さいだけでなく、遅すぎても様々な問題が生じます。適切な収穫時期を逃してしまうと、品質の低下や保存性の悪化につながるため注意が必要です。
収穫が遅れた場合に起こりうる主なデメリットは以下の通りです。
品質の低下
特に春植えの場合、収穫が梅雨明け後の高温期に及ぶと、地温の上昇によって芋が傷んだり、腐敗したりするリスクが高まります。また、収穫適期を過ぎて過熟状態になると、芋の内部に空洞ができたり、表面がひび割れたりすることがあります。
保存性の悪化
収穫が遅れた芋は、表面に傷がつきやすくなるほか、病原菌に感染するリスクも高まり、長期保存に向かなくなります。適切な時期に収穫したじゃがいもは、皮がしっかりと硬化し、保存中の品質劣化が少ないです。
栄養価の低下と再発芽
土の中に長く置きすぎると、芋が休眠から覚めて再び芽を出し始めてしまうことがあります。芽の成長には芋自体の栄養が使われるため、食味や栄養価が落ちてしまいます。
これらの理由から、地上部の収穫サインを見逃さず、適切なタイミングで収穫することが、美味しく質の良いじゃがいもを手に入れるために非常に重要となります。
失敗しない試し掘りのススメ
地上部の葉や茎が黄色くなり、収穫サインが見え始めたとしても、「本当に土の中の芋は大きくなっているのだろうか」と不安になることがあるかもしれません。そんな時に有効なのが「試し掘り」です。
全ての株を掘り起こす前に、1〜2株だけを試しに掘ってみることで、全体の生育状況を確実に把握できます。
試し掘りの目的は、芋の大きさと成熟度を確認することです。もし掘り出した芋が十分に大きければ、全体の収穫を開始して問題ありません。逆に、まだ小さいと感じた場合は、焦らずに株をそっと土の中に戻し、さらに数日から1週間ほど待ってから本収穫に臨むことができます。この一手間が、収穫の失敗を防ぎます。
試し掘りのコツ
試し掘りを行う際は、芋を傷つけないように注意深く作業することが大切です。株の真下をいきなり掘るのではなく、株元から15〜20cmほど離れた場所にスコップを入れ、土ごとゆっくりと持ち上げるようにします。手で優しく土を掘り進めて、芋の大きさや数を確認するのも良い方法です。
この試し掘りによって、収穫への期待感が高まると同時に、最適なタイミングを確信を持って判断できるようになります。
収穫に適した天気を見極める
じゃがいもの収穫作業は、いつ行っても良いというわけではありません。収穫後の品質や保存性に大きく影響するため、天候を見極めることが非常に重要です。
収穫に最も適しているのは、「晴天が2〜3日続いた後の、乾燥した土壌」の状態です。雨の日や、雨が降った翌日など、土が水分を多く含んでいる時に収穫するのは避けましょう。その理由は、濡れた状態で収穫すると、芋の表面に土がべったりと付着し、作業がしにくいだけでなく、以下のようなデメリットがあるからです。
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腐敗しやすくなる:芋の表面に付着した水分が、カビや腐敗菌の温床となります。
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傷がつきやすくなる:濡れた芋は皮が柔らかく、収穫作業中に傷がつきやすくなります。傷口から病原菌が侵入し、保存中に腐る原因となります。
収穫は午前中が最適
また、収穫作業を行う時間帯としては、午前中がおすすめです。午前中に掘り上げた芋を、気温が上昇する日中の時間帯に天日で乾かすことで、表面を効率よく乾燥させることができます。
午後遅くに収穫を始めると、十分に乾燥しきらないうちに日が暮れて気温が下がり、湿った状態が長く続いてしまう可能性があります。
このように、数日間の天気予報を確認し、計画的に収穫日を設定することが、美味しいじゃがいもを長く楽しむための秘訣です。
収穫の手順と注意点を知ろう
いよいよ収穫本番です。じゃがいもを傷つけずに、効率よく収穫するためには、正しい手順といくつかの注意点があります。
まず、作業を始める前に、スコップ(または鍬)と、収穫した芋を入れるコンテナやカゴ、そして手を保護するための軍手を用意しましょう。
収穫の基本的な手順
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地上部の除去:まず、枯れた茎や葉を刈り取るか、手で引き抜いておくと、作業スペースが確保できて効率的です。
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株元の茎を掴んで引き抜く:複数の茎を束ねるようにして根元をしっかりと持ち、ゆっくりと真上に引き抜きます。この時、土の中にいくつかの芋がくっついてくることがあります。
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周囲を掘り起こす:次に、芋を傷つけないよう、株があった場所から少し離れた位置(15〜20cm程度)にスコップを差し込みます。テコの原理で土ごとゆっくりと持ち上げるように掘り起こすと、土の中に残っている芋が顔を出します。
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手で探す:掘り起こした土の塊を優しく崩しながら、手で芋を探し出します。土の中に掘り残しがないか、丁寧にかき分けて確認してください。
収穫時の注意点
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芋を傷つけない:スコップの刃を直接芋に当ててしまうと、傷がついて保存性が著しく低下します。慎重に掘り進めることが大切です。
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軍手の着用:素手で作業すると、爪で芋の表面をひっかいてしまう恐れがあります。軍手をはめることで、これを防げます。
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水洗いはしない:収穫した芋は、水で洗わずに、表面の土を軽く手で払い落とす程度にします。前述の通り、水気は腐敗の原因となるため、乾燥させることが最優先です。
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小さな芋の扱い:収穫した芋の中には、非常に小さいものもあるかもしれません。500円玉より小さいような未熟な芋は、有毒物質であるソラニンを多く含む可能性があるため、食用にはせず処分するのが安全です。
これらの手順と注意点を守ることで、大切に育てたじゃがいもを最高の状態で収穫することができます。
収穫後の保存方法で長く楽しむ
収穫の喜びを長く味わうためには、収穫後の適切な保存が欠かせません。じゃがいもは正しい方法で保存すれば、数ヶ月にわたって美味しく食べることが可能です。
収穫直後の乾燥
まず、収穫したじゃがいもは、土がついたままの状態で、風通しの良い日陰で半日〜1日ほど広げて乾かします。この作業は、表面の水分を飛ばし、皮を硬化させることで、保存性を高めるために行います。
直射日光に長時間当てると、皮が緑化してソラニンが増える原因になるため、必ず日陰で行うことがポイントです。
基本は常温での冷暗所保存
乾燥させたじゃがいもは、光が当たらない、風通しの良い涼しい場所で常温保存するのが基本です。段ボール箱に新聞紙を敷き、そこに芋を入れて、さらに上から新聞紙をかぶせておくと、光を遮断し、適度な湿度を保つことができます。
りんごを1〜2個一緒に入れておくと、りんごから発生するエチレンガスがじゃがいもの発芽を抑制する効果があるため、より長持ちさせることができます。
気温が高い時期の冷蔵保存
夏場など、室温が高くなる時期は、常温保存だと芽が出やすくなります。そのような場合は、冷蔵庫の野菜室で保存するのがおすすめです。ただし、じゃがいもは温度が低すぎると(約4℃以下)、低温障害を起こしてでんぷんが糖に変化し、調理した際に焦げやすくなったり、食感が悪くなったりします。
そのため、チルド室や冷蔵室ではなく、比較的高めの温度(7〜10℃)に設定されている野菜室が適しています。保存する際は、キッチンペーパーや新聞紙で包んでからポリ袋に入れると、乾燥しすぎるのを防げます。
冷凍保存する場合
生のままじゃがいもを冷凍すると、解凍時に水分が抜けて食感が悪くなってしまいます。冷凍保存したい場合は、茹でるか蒸すかして完全に火を通し、潰してマッシュポテトの状態にしてから、小分けにしてラップで包み、冷凍するのが最適です。こうすることで、コロッケやポテトサラダなどに手軽に活用できます。
じゃがいも収穫目安の理解が栽培のポイント
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じゃがいも栽培は春植えと秋植えの2シーズンある
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春植えは初心者向けで収量が多く、梅雨対策が鍵
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秋植えはホクホク感が増すが、暑さと霜への対策が必要
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追肥は芽かき時と開花時の2回が基本
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追肥は芋の肥大化を促すが、与えすぎは禁物
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じゃがいもの花は食用ではなく、実は有毒なので注意
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収穫サインは葉や茎が7〜8割ほど黄色く枯れた頃
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植え付けから約100日後も収穫時期の目安になる
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収穫が遅れると芋が腐ったり品質が低下したりする
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収穫前に1〜2株だけ掘る「試し掘り」で失敗を防ぐ
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収穫は晴天が続いた日の午前中が最適
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濡れた土での収穫は芋が傷みやすく腐敗の原因になる
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収穫後は日陰で乾かし、水洗いはしない
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基本の保存方法は光を遮断した冷暗所での常温保存
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夏場は新聞紙に包んで冷蔵庫の野菜室で保存する
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