「とる」という言葉は日常で頻繁に使いますが、いざ文章にしようとすると、どの漢字を使えば良いか迷った経験はありませんか。
特に、毎日のように使う睡眠を取るという表現の「とる」は、どの漢字が正しいのでしょうか。
この、とるという漢字の使い分けは、社会人としての知識の一つとも言えます。
例えば、責任ある行動をとると言った漢字の表記や、目標として資格をとると言う意味で使用する漢字の選択で迷うこともあるでしょう。
他にも、食事をとる、あるいは時間をとるに対する漢字の使い分け、さらには、趣味の釣りで魚をとるでも、取るか獲るかで悩むかもしれません。
仕事の場面では、的確な対策をとるや、物事のバランスをとると言う表現をする時に適切な使用が求められたりします。
この記事では、これらの具体的なシーンを網羅しながら、「とる」の漢字表記を解説していきます。
ポイント
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様々な「とる」の漢字が持つ基本的な意味
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「睡眠をとる」という表現で「取る」が一般的に使われる理由
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日常の様々なシーンに合わせた「とる」の正しい使い分け方
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ビジネス文書でも迷わない「とる」の表記に関する知識
睡眠をとるの漢字はどれを使う?
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「とる」と言う漢字の使い分けの基本をチェック
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「睡眠を取る」で「取る」が一般的な理由
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時間を確保する場合の「とる」
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「食事をとる」は「取る」か「摂る」か
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目標達成で使う「資格をとる」
「とる」と言う漢字の使い分けの基本をチェック
日本語の「とる」には、「取る」「採る」「捕る」「執る」「撮る」など、非常に多くの漢字が当てられており、それぞれが異なるニュアンスを持っています。
これらの使い分けを理解することが、正確な文章を書く上での第一歩となります。
一般的に、最も広い意味で使われるのが「取る」です。
これは常用漢字であり、手に持つ、自分のものにする、取り除くなど、多岐にわたる意味をカバーします。
そのため、どの漢字を使うべきか迷った際には、「取る」と表記するか、ひらがなで「とる」と書けば、大きな間違いになることは少ないでしょう。
一方で、他の漢字はより限定的な意味合いを持ちます。
例えば、「採る」は選びとる、採用する、採集するといった意味で使われます。
「捕る」は動物や虫などを捕まえる行為を指し、「執る」は事務や儀式などを執り行う場面で用いられます。
そして、「撮る」は写真や映像を記録する場合に限定して使用される漢字です。
このように、それぞれの漢字が持つ中心的な意味を把握し、文脈に応じて最適なものを選ぶ意識を持つことが大切になります。
「睡眠を取る」で「取る」が一般的な理由
「睡眠をとる」という表現では、一般的に「取る」という漢字が使われます。
これには明確な理由がいくつか考えられます。
まず、「取る」という漢字が持つ「自分のものにする」「得る」という意味合いが、「睡眠」という行為にしっくりくるからです。
睡眠は、体を休ませて活力を得るための行為であり、自らのために休息という時間を「手に入れる」と解釈できます。
英語で「get sleep」と表現されることがあるように、睡眠を自ら能動的に確保するというニュアンスが、「取る」という漢字によって表されているのです。
また、前述の通り、「取る」は常用漢字であり、非常に広い意味で使われる一般的な表記です。
公的な文書や報道などでも、「睡眠をとる」の場合は「取る」が使われるのが通例となっています。
他の漢字、例えば「摂る」は栄養などを体内に取り込む意味合いが強く、睡眠には適しません。
「捕る」や「採る」も文脈に合わないため、消去法で考えても「取る」が最も自然な選択肢となります。
以上の理由から、「睡眠を取る」と表記するのが一般的であり、最も適切な表現であると言えます。
時間を確保する場合の「とる」
「時間をとる」という表現においても、「取る」が使われるのが正解です。
これは、「睡眠を取る」と同様に、「取る」が持つ「確保する」「自分のために所有する」という意味合いに基づいています。
私たちは、会議や打ち合わせ、あるいはプライベートな予定のために、特定の日時をあらかじめ確保します。
この行為が、まさに「時間を取る」ということです。
他にも、「休みを取る」「席を取る」「予約を取る」といった表現もすべて同じ考え方です。
これらはすべて、自分や特定の目的のために、時間や場所、権利などを確保する行為を指しており、「取る」という漢字がそのニュアンスを的確に表しています。
このように、何かを物理的に掴むだけでなく、無形の概念である時間や権利などを自分のものとして確保する場合にも、「取る」は幅広く使用されます。
この用法を理解しておくと、様々なビジネスシーンや日常会話で漢字の選択に迷うことが少なくなるでしょう。
「食事をとる」は「取る」か「摂る」か
「食事をとる」という表現の漢字表記は、多くの人が悩むポイントの一つで、「取る」と「摂る」のどちらも使われる可能性があります。
どちらが正しいかは一概には言えず、書き手が伝えたい意図や文脈によって使い分けるのが適切です。
一般的な行為としての「食事を取る」
まず、「食事を取る」という表記は、食事という行為そのものを指す、最も一般的で広範囲に使える表現です。
「取る」は常用漢字であり、「手に入れる」「自分のものにする」という基本的な意味を持っています。
ここから転じて、単に「食事をする」という日常的な行動を表す際に広く用いられます。
例えば、「友人と夕食を取る約束をした」「忙しくて昼食を取る暇もなかった」といった文脈では、食事の栄養面よりも、食事というイベントや行為自体に焦点が当たっています。
このような場合は、「取る」を使うのが自然であり、最も無難な選択肢と言えます。
栄養補給を意識した「食事を摂る」
一方で、「食事を摂る」と表記すると、文章に特定のニュアンスが加わります。
「摂」という漢字は、「体内に取り入れる」という意味を持つ「摂取」という熟語で使われるのが代表的です。
このことから、「摂る」には、単に食べるという行為以上に、生命維持や健康増進のために栄養を体内に取り込む、という意識が含まれます。
したがって、「アスリートとして、バランスの取れた食事を摂ることが大切だ」「体調を崩した後は、消化の良い食事を摂るようにしている」といった文脈では、「摂る」を用いることで、栄養補給という目的をより明確に表現できます。
「ビタミンを摂る」「水分を摂る」といった表現も同じ考え方です。
公的な場面での注意点
ここで一つ注意すべき点があります。
「摂」という漢字は常用漢字ですが、「とる」という訓読み(和語の読み方)は常用漢字表に含まれていません。
これを「表外読み」と呼びます。
このため、新聞や公的な文書、ビジネス文書といったフォーマルな文章では、読者を選ばないように「表外読み」を避ける傾向があります。
その場合、「食事を摂る」と書く代わりに、以下のような表現が選ばれることがあります。
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ひらがなで書く:「食事をとる」
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「取る」で代用する:「食事を取る」
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別の言葉に言い換える:「食事をする」「栄養を摂取する」
プライベートな文章では意図を明確にするために「摂る」を積極的に使うことも有効ですが、公の場では読み手への配慮が必要になる場合があると覚えておくと良いでしょう。
資格などの目標達成で使う「とる」
「資格をとる」や「免許をとる」のように、努力によって何かを達成し、自分のものにする場面では「取る」が使われます。
これも、「取る」の持つ「手に入れる」「獲得する」という意味が、文脈に合致しているからです。
資格や免許は、勉強や訓練といった過程を経て、試験に合格することで初めて得られるものです。
この「努力の末に獲得する」というニュアンスが、「取る」という漢字一文字に込められています。
同様の例として、「試験で満点を取る」「コンテストで一位を取る」「天下を取る」といった表現も挙げられます。
これらはすべて、目標を達成し、その結果や地位を自分のものにした状態を示しています。
このように、「取る」は物理的なものだけでなく、地位、評価、権利といった抽象的なものを獲得する際にも用いられる非常に便利な漢字です。
目標達成に関する文脈で「とる」が出てきた場合は、「取る」を使うと覚えておくと良いでしょう。
睡眠をとる以外にも気になる「とる」を表現する漢字の使い分け方
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対応を示す「対策をとる」の表現
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責任が伴う「行動をとる」の表記
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調整する意味の「バランスをとる」
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魚をとるは目的で漢字が変わる
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「取る」と「獲る」のニュアンスの違い
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睡眠をとる以外でも「とる」の漢字はさまざま
対応を示す「対策をとる」の表現
ビジネスシーンなどで問題に対応する際、「対策をとる」という言葉がよく使われます。
この場合の「とる」は、一般的に「取る」と書くことが多いですが、よりフォーマルな場面では「講じる」という動詞が好まれる傾向にあります。
「対策を取る」と表記する場合、「取る」は具体的な手段や措置を実行に移す、というニュアンスを持ちます。
すでにある選択肢の中から、あるいは決まっている方策を実行するイメージです。
例えば、「情報漏洩に対して、新たなセキュリティ対策を取る」といった使い方をします。
一方で、複数の選択肢の中から最適なものを選び出す、というニュアンスを強調したい場合は「採る」が使われることもあります。
「いくつかの案の中から、最も効果的な対策を採る」という文脈です。
そして、最もフォーマルで、公的な文書や報道で頻繁に使われるのが「対策を講じる」です。
「講じる」には、方法や手段を考えて実行するという意味があり、施策全体を計画し、実施するような重みのある表現となります。
状況や文脈に応じて、これらの表現を使い分けることが求められます。
責任が伴う「行動をとる」の表記
「行動をとる」という場合の「とる」は、通常「取る」と表記するのが一般的です。
これは、特定の行動を選択し、実行するという意味合いから「取る」が適切だからです。
しかし、その行動に強い意志や責任、あるいは特定の任務を遂行するという意味合いを込めたい場合には、「執る」という漢字が使われることがあります。
「執」という漢字は、「執筆」や「執行」、「執務」といった熟語からも分かるように、ある役割や職務を責任を持って行うというニュアンスを持っています。
例えば、「リーダーとして断固たる態度を執る」「組織の代表として指揮を執る」といった文脈では、「執る」を用いることで、その行動の重みや決意の強さを表現できます。
ただ、日常的な文脈で「行動をとる」と書く場合に「執る」を使うと、少し大げさな印象を与える可能性もあります。
そのため、一般的な文章では「取る」と書くか、文脈が曖昧な場合はひらがなで「とる」と表記するのが最も無難な選択と言えるでしょう。
調整する意味の「バランスをとる」
「バランスをとる」という表現では、「取る」が使われます。
これは、二つ以上の要素の間で均衡やつり合いを保つ、調整するという意味合いを「取る」が持っているからです。
物理的に体の平衡を保つ場合も、「両手を広げてバランスを取る」と表現します。
また、抽象的な概念に対しても使われ、「仕事とプライベートのバランスを取る」や「収入と支出のバランスを取る」といった用例があります。
これらはすべて、どちらか一方に偏らないように、適切な状態に調整・維持するという行為を指しています。
この用法は、「調子をとる」や「リズムをとる」、「間を取る」といった表現にも共通しています。
音楽に合わせて手拍子でリズムをとったり、会話の中で適切な間を取ったりする行為も、一種の調整作業と考えることができます。
このように、何かを調整し、適切な状態を保つという意味で「とる」が使われる場合は、「取る」が対応する漢字だと覚えておきましょう。
魚をとるは目的で漢字が変わる
「魚をとる」という一つのフレーズでも、その目的や方法によって使われる漢字が異なります。
これは「とる」の漢字の使い分けを理解する上で、非常に分かりやすい例です。
目的・方法 |
漢字 |
意味・ニュアンス |
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釣りや手づかみなど、個人的に捕まえる |
捕る |
生き物を「捕獲する」という意味合いが強い。 |
漁業として、網などで大量に捕獲する |
獲る |
食料や資源として価値のあるものを「獲得する」イメージ。 |
観賞用など、特定の魚を選んで捕まえる |
採る |
必要なものを「採取する」「選びとる」というニュアンス。 |
上記以外、または一般的な表現として |
取る |
最も広義で使える。文脈を限定しない場合など。 |
このように、単に魚を捕まえるという行為でも、それが趣味の「捕獲」なのか、生業としての「漁獲」なのか、あるいは研究のための「採取」なのかによって、最適な漢字が変わってきます。
もし、どの漢字を使うべきか迷った場合は、最も一般的な「取る」を使うのが無難ですが、文脈をより正確に伝えたい場合は、これらの違いを意識して使い分けることが望ましいでしょう。
「取る」と「獲る」のニュアンスの違い
「取る」と「獲る」は、どちらも「手に入れる」という意味合いで使われますが、そのニュアンスには明確な違いがあります。
「取る」は、非常に広範囲な意味を持つ一般用語です。
物理的に手に持つことから、資格や時間、バランスなど抽象的なものを手に入れることまで、様々な文脈で使用できます。
特定の強い意味合いを込めずに、何かを得る行為全般を指すことができる便利な言葉です。
一方、「獲る」は、より限定的な意味で使われます。
「獲物」という言葉があるように、主に狩猟や漁業などによって、動物や魚といった生き物を捕らえて手に入れる場合に使われる漢字です。
そこには、労力や技術を使って、価値のあるものを自然界から獲得するという、ややダイナミックなニュアンスが含まれます。
例えば、「熊を獲る」「大物を獲る」といった表現が典型的です。
常用漢字としては「獲」に「とる」という訓読みは示されていないため、公的な文書では「取る」で代用したり、ひらがなで「とる」と書いたりすることが推奨されています。
しかし、文学作品や個人の文章などでは、このニュアンスの違いを表現するために「獲る」が意図的に使われることも少なくありません。
睡眠をとる以外でも「とる」の漢字はさまざま
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「とる」には「取る」「採る」「捕る」「執る」「撮る」など多くの漢字がある
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「睡眠をとる」の場合は「自分のものにする」意味合いから「取る」が一般的
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「取る」は最も意味が広く、迷った時の基本的な選択肢となる
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「食事をとる」は行為自体なら「取る」、栄養摂取なら「摂る」
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ビタミンなどの栄養を「とる」も「摂る」がより適切
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動物や虫などの生き物を捕まえる場合は「捕る」
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多くのものから選びとる場合は「採る」(例:会議で決を採る)
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事務や職務を責任もって行う場合は「執る」(例:指揮を執る)
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写真や映像を記録する場合は「撮る」
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「資格をとる」など目標達成や獲得の意味では「取る」
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「時間をとる」など無形のものを確保する場合も「取る」
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「バランスをとる」など調整する意味でも「取る」が使われる
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「魚をとる」は目的により「捕る」「獲る」「採る」「取る」を使い分ける
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「獲る」は狩りなどで価値あるものを獲得する強いニュアンスを持つ
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文脈に応じて最適な漢字を選ぶことで、文章の意図がより明確になる
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